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年金教室

◆ 年金教室 - 年金の仕組みとポイント

1972年生まれ。1999年、社会保険労務士試験合格。その後、都内の事務所勤務を経て、2001年5月に後藤社会保険労務士事務所を開業。企業の顧問として、人事・労務相談、採用活動支援、給与計算、給付金・助成金の申請などの業務を行っている。

他の保有資格:2級FP技能士、NPO生涯学習認定キャリア・コンサルタント


後藤正英
「将来は年金がもらえなくなる!?」「社会保険庁は無駄遣いし過ぎ」など、年金にまつわる話はいろいろなところで聞かれます。ところでみなさんは、年金の仕組みを正しく理解していますか? 保険料を払うのであれば、その仕組みをしっかり理解して、受け取るべきものはきちんと受け取りたいもの。年金に関してはいろいろなケースがあり、年金に関することだけで本が何冊もでているほど複雑なのですが、ここでは、基本中の基本、押さえておきたいポイントをお話ししたいと思います。


【1】公的年金には、3つの種類がある

公的年金には、3つの種類があります。
一つ目は、自営業者、フリーランス、学生、フリーター、無職の人などが加入する、国民年金。二つ目は、サラリーマンや会社役員などが加入する、厚生年金。そして、三つ目が公務員や教職員が加入する共済年金です。

よく、年金制度は2階建ての家に例えられます。1階部分が国民年金で、2階部分が厚生年金や共済年金にあたります。ですから、厚生年金や共済年金に加入している人は、同時に国民年金にも加入していることになるんですね。すると、一つ目のグループにあたる、国民年金にしか加入していない人は、1階部分しかありません。そういう人は、公的年金ではありませんが、国民年金基金や確定拠出年金(401K)などを使って、自分で2階部分を作ることができます。

また同様に、二つ目と三つ目のグループの人は、厚生年金基金や確定拠出年金などで3階部分がある人もいます。ただ、これは自分でどうするかというよりも、会社が福利厚生の一環として、こういうものを取り入れているかどうかによります。


【2】年金加入者の種類も3つある

ここで少しややこしいのが、加入者にも3つ種類があるということです。
1〜3号まであるのですが、まず第2号被保険者から話をしましょう。これは、サラリーマンや公務員など、厚生年金や共済年金に加入している人たちのこと。上記でいう、二つ目と三つ目のグループの人を指します。

そして、第3号被保険者は、先述の第2号被保険者、つまりサラリーマンや公務員に扶養されている20〜60歳未満の配偶者を指します。一般的には、主婦の人がこれに該当しますが、パートなどで130万円以上の収入がある人は、扶養されているとみなされませんから、第3号ではなくなります。

そして、最後が第1号被保険者。第2号にも第3号にもあてはまらない、20〜60歳未満の人たちです。国民年金に加入する一つ目のグループ、自営業者、フリーランス、学生、フリーター、無職の人などがこれに当たります。先ほどのパートで130万円以上の収入があり、扶養されているとみなされない主婦も、ここに該当します。

加入者の種類(=種別といいます)が変わる時の手続きは、注意が必要です。

例えば、学生→会社員→自営業と、職業が変わっていった人がいるとしましょう。すると、この人の種別も1号→2号→1号と変わることになります。
学生から会社員になるときは、1号から2号への転換を会社が手続きをしてくれます。しかし、会社を辞めて自営業になる場合、2号から1号への転換は自分で手続きしなくてはいけません。会社を辞めた時は2号でなくなった状態で、何にも加入していない状態です。なので、1号への加入手続きをしなくては、国民年に加入したことにはならないわけです。

そのまま忘れていると、年金の加入期間に空白ができてしまい、年金を受け取る際に額が少なくなってしまったり、空白期間の長さによっては、年金受給資格を得られずに、まったく年金が受け取れなくなったりする可能性があるので、注意が必要です。

また、例えば女性で、学生→会社員→会社員と結婚して主婦→夫が退職して自営業に、という人がいるとしましょう。この場合、年金の種別は1号→2号→3号→1号となります。夫が退職して2号から1号へ変わる手続きをしていても、妻が3号から1号に変わる手続きをしなければ、これまた年金加入期間に空白ができることになってしまいます。

手続きは、お住まいの地域の社会保険事務所か、市区町村の役所窓口でできます。不安がある人は一度、確認してみるとよいでしょう。


【3】年金の給付も3つの種類がある

年金というと、「年金生活」などと言うように、年をとってから受け取る老齢年金を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、この給付にも3つの種類があるのです。

一つ目が、今述べた、老後の生計を支えるための老齢給付。二つ目は、病気や事故で障害を負ったときの障害給付。三つ目は、年金に加入している人が亡くなった時に遺族に支払われる遺族給付です。
国民年金に加入している人が、受給年齢に達したり、障害を負った場合など、それぞれ老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金が支払われます。厚生年金や共済年金の加入者は、その基礎年金に加えて、それぞれの年金が上乗せされることになります。

年金というと、老齢年金のことだけしか思い浮かばない人がいるかもしれませんが、万が一障害を負ってしまった時や、一家の大黒柱がいなくなって遺族で生活しなくてはならなくなったときに受けられる、大切な給付があることを知ってほしいと思います。

自分がどれくらい給付されるのか、気になるところではありますね。60歳近くになると、より具体的な数字が分かってくるのですが、そうでない場合でも、社会保険庁のホームページで、簡単な試算をすることができます。

http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/top.htm

こういったことは、学校では習いませんから、きちんと理解している人は少ないんですよね。年金制度も細かくやろうとすると複雑で、難しいことも多いのですが、大まかな仕組みはぜひ、高校の社会の授業などに取り入れるべきだと思います。実際、社会保険労務士の業界としては、そのような取り組みもし始めているんですよ。


【4】年金の保険料

保険料というと一番多い誤解が、自分の支払った保険料が老後に自分の年金になってかえってくる、というものです。確かに年金の制度は「保険料」をみんなから集め、必要とする人に支給するという「保険方式」ですから、払った保険料が自分にかえってくると考えてしまうと思います。
でも、老齢年金は、今、年金をもらっている人の原資を、今の若い世代の保険料でまかなう「世代間扶養」という仕組みをとっています。ですから、自分が支払った保険料が老後に自分にかえってくるというわけではないのです。

国民年金保険料の未納者が多いことが社会問題にもなっていますが、年金を受け取るには、保険料を支払わなくてはいけません。その保険料は、加入する年金の種類によって、次のようになっています。

国民年金の第1号被保険者の保険料は、平成18年度の時点で、月額1万3860円です。この保険料は平成17年度から毎年280円ずつ引き上げられていて、平成29年(2017年)度から1万6900円で固定されることになっています。

サラリーマンの加入する厚生年金では、給料とボーナスから一定の料率をかけて計算された保険料を会社と本人が折半して負担しています。ですから、実際には、給与から天引きされている保険料の倍の額が、保険料として支払われているわけです。

平成18年4月時点での料率は14.288%でこれを折半して、会社と本人で7.144%ずつ負担しています。この料率も平成16年度から毎年0.354%ずつ引き上げられていて、平成29年(2017年)度から18.3%(本人負担9.15%)で固定されることになっています。例えば、30万円の給料から本人が負担する額は、現在2万1432円ですが、平成29年度には2万7450円となります。

平成14年度までは、ボーナスには給与の料率よりもかなり低い料率が適用されていました。ただ、ボーナスの保険料は年金額には反映しませんでした。しかし、月々の給与を少なくして、ボーナスの金額を増やすことで、年間で支払う給料は同じでも、会社が負担する保険料も少なくしよう、という企業がでてきました。そこで、平成15年度からは総報酬制度ということで、ボーナスにも同じ料率がかけれらることになったのです。導入直後は、ボーナスから引かれている額を見て、ずいぶん減ったと感じた人も多かったでしょう。ただ、支払う保険料が多くなる分、厚生年金の受給額にも反映されます。

先ほどの種別で出てきた、サラリーマンの主婦などに該当する第3号被保険者は、保険料がかかりません。これは、夫が妻の分と合わせて二人分納めている、ということではなく、この年金制度全体が負担していることになっています。最近では、自営業者の妻は自分で保険料を払わなくてはいけないのに、サラリーマンの妻は払わなくてもいいということが不公平だということが、議論になっていますから、今後、変わっていくかもしれませんね。


【5】国民年金の保険料割引と免除申請

国民年金では、保険料を前払いして割引を受けることができます。
平成18年度では、1年分の前納を口座振替で行うと、年間保険料16万6320円が16万2830円となり、3490円の割引になります。これが現金払いだと、支払額は16万3370円で、2950円の割引になります。6ヶ月前納というものもあり、口座振替で940円、現金払いで680円割引となります。

また、生活が苦しくて保険料を払いたくても払えない人のために、国民保険では、保険料の免除制度や猶予制度があります。
失業した場合などで所得が一定以下の時は、保険料の全額または半額が免除されます。免除されている期間は、保険料を払っていなくても年金の加入期間としてカウントされますし、保険料を納めている人と同額ではありませんが、年金額にも反映されます。

また、学生や収入の少ない若年者には、保険料の納付を待ってもらえる猶予制度があります。この期間は年金額には反映されませんが、就職などして保険料が払えるようになった時に10年以内であればさかのぼって納めることができ、年金額に反映させることができます。また、猶予期間中も年金の加入期間としてカウントされます。

いずれにしても、申請しなければ免除にも猶予にもなりません。申請もしないで、保険料を支払っていないと、国民年金に未加入、未納ということになり、年金を受け取ることができません。

たとえば、同じ保険料を支払っていない状態の21歳の学生がいたとします。Aさんは申請して猶予の状態でした。Bさんは申請をしていませんでした。
二人が交通事故で、重度の障害を負ってしまったと仮定しましょう。二人とも車いす生活を余儀なくされ、障害等級2級に該当するとされました。するとAさんは障害基礎年金を年額で約80万円受け取ることができます。しかし、猶予の手続きをしていないBさんは、国民年金に加入していないことになるので、年金は一切受け取れません。75歳まで支給されるとして、21歳からの54年間の合計は、約4320万円。手続き一つで、このような差が生まれることもあるのです。


【6】年金請求のポイント

60歳近くになってくると、仲間うちでの話題に、年金のことが出てくることがあると思います。また、テレビなどでもそういった、○○さんの場合、などと言って、事例が紹介される場合がありますね。

「Aさんは、年金は60歳からもらうと損をする、と言っていた」
「Bさんは、年金の支給開始年齢が遅れているから、63歳からしかもらえない、と言っていた」
「Cさんは、60歳以降も働くと年金はもらえない、と言っていた」

など、いろいろな情報を耳にするかもしれません。しかし、ほかの人のケースの情報で、自分の年金のことを判断しないでください。
これらの話の中には、ある人にはあてはまることもありますが、誤解や勘違いも含まれています。

まず、60歳から年金をもらうと損をする、というのは、サラリーマンだった人には当てはまりません。また、支給開始年齢が遅れているというのも事実ですが、現段階で遅れて支給されるのは、定額部分のみであって、報酬比例部分は60歳から支給されます。60歳以降もサラリーマンとして働く場合、給与額によってはもらえる年金の一部、または全部がカットされてしまいます。しかし、もし厚生年金基金に加入していた期間があるとすれば、基金からの年金はカットされずに60歳からもらえることになります。

つまり、年金については、年齢や現在の収入、これまでの加入の種別などによって、人それぞれ違うんですね。ですから他人の話で、「どうせ今申請してももらえないわ」などと判断しないように注意する必要があります。

58歳になると、年金加入状況の記録が送られてきます。その確認のためには、自分の職歴を細かく思い出し、整理しておくことが重要です。
というのは、平成9年以降は基礎年金番号というものがつく制度になり、個人のデータは一元化されているのですが、それまでは、転職などの際に、会社の申請によって年金手帳も年金番号も2つできてしまい、それぞれが別の記録になっていることがあるからです。この二重記録の例は結構あって、たとえば名前でも「ヤマサキ」「ヤマザキ」などと別の呼び方で登録したために、別人として記録されてしまっていたりします。すると、年金の加入期間が短く記録され、それに気付かないままでいると、年金額が減ってしまうことがあるのです。しっかりした職歴のデータがあれば、別の記録で管理されているデータを統合することができます。

平成18年春から、社会保険庁では、年金の加入期間などの記録をインターネットで確認できるサービスを開始しています。転職が多かった方などは、こういったサービスを利用して、ご自分の年金の記録を確認しておくといいでしょう。
また、最近では60歳の誕生日前になると、年金の請求用紙に加入記録が印字されて送られてきます。しかし、送られてきたものをそのままにしていては、いつまで経っても年金は受け取れません。年金は自分から請求してはじめてもらえるので、注意しましょう。

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